ECにおける決済方法の苦労した話

こんにちは。アプロ総研の受注担当です。

コラムって何を書いても良いそうなので、今回はネットショップにおける主な決済方法の注意事項と共に、実際にあった事例などを交え、苦労した話をすることにします。
こちらの記事で受注処理について「経験と要領の良さが求められる」と紹介されていますが、実際どういうこと?と想像が及ばないものです。が、決済の知識も幅広く必要になったりしてこれがまたややこしいのです。

その前に:オーソリの話。

ご存じの方は読み飛ばし推奨です。

クレジットカード決済にはオーソリというものがあります。
クレジットカードは、買い物と同時ではなく、口座から引き落としになるまで時間がありますよね?
そして利用限度額というものがありますよね。

オーソリというのは簡単に言えば「そのカード本当に使えますか?」審査です。期限が切れていないか、限度額は超過していないかなどなど。で、例えば月の使用限度額が10万円で1万円のお買い物をした場合、1万円の枠を抑え、その月の利用できる額の残りは9万円になります。
この審査と手続きをオーソリと言います。

オーソリが通らないとその注文を発送してもお金がもらえない、ということになりますので注文できなかったりキャンセルになったり、支払い方法の変更を求められたりします。


因みに後払いについても、信用情報(支払い能力)や本人確認の「与信審査」という審査があります。
勿論これに通らないと発送できません。

 

クレジットカード

ECサイトの決済においておよそ6割超を占める、一番スタンダードな決済方法ですね。

オーソリ切れ

ECサイトにおいて、請求のタイミングとしては「購入完了時に請求を確定する」タイプと「発送時に請求を確定する」タイプがあります。後者が一般的ですが、実際には購入時にオーソリを取って、とりっぱぐれしないように枠を確保してあるんですね。

で、この確保期間がカードによって結構まちまちなのです。起こる確率は低いですが、最短で30日でオーソリが切れてしまうので指定日配達で選択できる日付は30日程度にしておきましょう。

オーソリが切れていたことが発覚したら、お客様に連絡を取って銀行振り込みのお願いをしないといけないなど、その対応はかなり精神に来ます。 そしてこの原因はフロントの配達日指定の設定である事が多いです。
当然ですがバックオフィス業務はフロントの運用とつながっていますので、バックオフィス担当だからまるで無関係ということは無いのです。

キャンセルと返金の発生時期

通常のキャンセルであれば、オーソリが消去されて引き落としは起こりません。

問題は請求を確定した後の返金の場合です。締め日が過ぎていなければ、請求と返金で相殺され、引き落としは発生しません。

しかし、締め日を過ぎていると、一度引き落としが行われ、次月に返金となります。しかも、次月の引き落とし分から返金金額が相殺されての実質返金になりますので、返金の際はご案内に注意しましょう。締め日はカード会社ごとにばらばらの為、返金処理は完了したけれど、実際の返金のタイミングは個人情報の為、カード会社に確認していただくようお伝えするのがおすすめです。

これを怠ると、1ヶ月2ヶ月越しの連絡で非常にお困りのお客様のご対応をすることになります。

 
チャージバック(不正注文)

世間では転売は凶弾されていますが、単なる転売(自分で商品を購入し、高値で他の人に売る)目的であれば、まだ米粒1粒分くらいはEC事業者の場合救いがある気がします。

タチドの持ち主も不正利用に気づいた時点で「これは私の買い物じゃない!」とチャージバックの申請をすることができます。
するとお金を請求したショップに「お金返しなよ。この注文はカードの不正利用だったんだよ」と連絡が来ます。
じゃあショップはお金返すしかないですよね。

・・・・・・そう、このチャージバックにおいて責任はショップ側にあり、ショップ側は基本的に一切保証を受けられないんですね。商品は取り返せない、お金ももらえない、対応時間もかかる。踏んだり蹴ったりです。


因みに最近は「盗んだカードが生きているかどうか」のチェックの為の不正注文もあるようです。
つまり、商品を受け取る気はない。しかし、このケースで返送になった場合でも手元に商品が返送されてくるだけでお金は一切もらえません。

デビットカード

続いてクレジットカード決済と似ているようで異なる!デビットカードです。
未成年でも作ることができたりお金の管理がしやすかったりメリットも大きいカードです。
ですが、クレジットカードと一見見分けがつかないにもかかわらず、異なる点があるため返金時や金額変更時には注意が必要です。

返金までに時間がかかる

デビットカードは返金までにものすごく時間がかかります。

「返金しました!」と言っても1ヶ月後くらいに「まだ戻ってきてないんですけど…」と問合せがきたりしますので、クレジットカードと同じく締め日はカード会社ごとにばらばらの為、返金処理は完了したけれど、実際の返金のタイミングは個人情報の為、カード会社に確認していただくようお伝えするのがおすすめです。
その上でデビットカードをお使いの場合、返金までに最大2ヶ月程度かかることがあります、と注釈を付けるなどで対策しましょう。

一次的な二重決済

デビットカードは即時引き落としです。その為金額変更があった場合、再度変更分の引き落としが行われてしまい、返金までの間2重決済となってしまいます。しかも返金までの時間が長い。

デビットカードかクレジットカードかは判別できないことも多いので、もしも問合せを受けた場合は上記のご説明をする必要があります。
決済サービスによっては、デビットカードの使用を制限できるオプションもあるくらいです。
管理画面からは一見見分けがつかないことも多いので説明が不足しがちですが、長くなっても事前にご説明するようにしましょう。

AmazonPay

でました!ユーザー人気の高いAmazonPayです!会員登録の手間が面倒、色んなサイトにカード情報を登録したくない…といったお客様のニーズに答えられる便利なところがたくさんあります。法人登録をしないと使用できないことから信用度もあります。

が、ちょっと他にはない特殊な注意事項があります。

 

オーソリが30日できれる

AmazonPayのオーソリ期限は30日しかありません。通常のお買い物であれば気にする必要が無いのですが、30日以上先の指定日配達を設定されていたりすると、オーソリが切れてしまい商品代金の請求ができなくなってしまいます。
その為、導入しているショップはクレジットカード決済でも述べた通り配達指定のできる日付は1ヶ月以内にしておきましょう。営業日換算で指定できる場合は20営業日くらいにしておかないと、長期休暇などを挟むとうっかり30日を超えてしまうケースがあるので、AmazonPayの場合は併せて特にフロントの表示に注意しましょう。

イレギュラーとして、30日以上先の日付を個別に依頼された場合も、日付が近くなってから再度ご注文してほしいとお断りする必要があります。

また、受発注商品が基本で注文~請求(発送)までに1ヶ月以上かかることが多いショップは導入しないほうがいいケースもあります。しょっちゅうオーソリ切れが起こるなんて、たまったものではありませんからね…

 

金額変更の上限

実はAmazonPayには金額変更の上限が存在します!

購入金額の15%か8400円の低い方、です。4000円の注文なら追加で請求できるのは600円まで、60000円なら8400円までになります。「やっぱり2個じゃなくて3個にしてください」って言われて了承したのに変更画面でエラーが出る……ということもあります。
因みに一番困ったのは、離島への配送で送料を変更したい場合です。お客様の合意も取れてさあ変更!という時にエラーが出てしまうと、再注文をお願いしたり、送料という商品のURLをあらかじめ共有し、同時に購入してもらうなどしないと対応できないケースがありました。

(因みに、交渉すればこの金額変更の上限は変更することが可能です。困っていたらAmazonPayに相談してみましょう。)

別人の住所に荷物が送られてしまう

これは何というか、誰も悪くない割に混乱するパターンです。
AmazonPayで送り先住所を指定する際にアドレス帳に登録のある、全く別人の住所を誤って選択してしまい荷物を受け取った本人がパニックになるというものです。

送り主が知人の名前であれば問題は大きくなりにくいのですが、荷主にショップの名前が出ていたり、配送先住所が購入者情報として表示されてしまうShopifyなどはその混乱もひとしおでしょう。

銀行振り込み

商材や顧客の年齢層によっては大変支持される決済方法ですね。

 振り込み名義人が違う(注文との照合ができない)

購入者は担当者だけど、振り込み名義は会社になっていて本人確認が取れない…ということが過去にありました。電話もしくはメールで本人確認を行いましょう。
ちなみに楽天であればその情報をお問合せすることで振込確認を通してくれます。

銀行振り込み決済を選択していることに気づいていない

いつまでたっても振り込みがないお客様のご注文をキャンセルしたら、「発送はいつですか」というお怒りのメールが届いたことも1度や2度ではありません。


意図せず希望とは異なる決済方法を選択してしまわれている…などの場合も「貴方が銀行振り込みにしたんでしょ?」という意識が透けて見えるとお客様は気分を悪くされます。
「そっちが勝手に変更したんじゃないの?」と思われてしまう事にもつながりかねませんので、可能な限りデータやメールの履歴を確認し、「原因は分かりかねますが、そういう注文データで受け付けている」「だから発送処理できなかった」などと柔らかくお伝えしましょう。

 

微妙に振込金額が足りない

まれにあるんですが、「商品代金のみを振り込み送料を忘れていた」「金額を空目して間違えている」などのケースです。
勿論お金が足りない場合「追加で振り込んで」というしかないのですが、500円の振り込みの為に300円の手数料がかかるなどで「じゃあキャンセルします」と言われないかひやひやしますね。

そしてキャンセルの場合でも、振込手数料を差し引いての返金になるのが基本ですので、非常に心が痛いです。
勿論、案内した金額に不備があればこの限りではありませんよ。

これとは少し異なるケースで微妙に多い金額で振り込まれていたこともありました。
お客様に言わないわけにもいかないのですが、振込手数料を差し引くとマイナスになってしまう超レアケースに遭遇したこともあります。

代引き

出ました!!ECの運営側から最も嫌われているであろう代引きです!
商品の受け取りと同時に、配送業者に代金を引き渡す方法です。330円程度の手数料がかかりますが、いまだに根強い人気を誇る決済方法でもあります。

返送になるケースが他の決済方法より多い

最近は代引きを廃止するショップもありますね。廃止の背景には転売問題も絡んできますが、代引きを導入しているショップからは度々「代引きをやめたい」という声が聞こえます。それはなぜか。
経理的な観点から入金元が1か所増え、その消込が必要になる点。送り状が異なり発行に手間がかかる点…等もありますが、実態はもっと深刻です。


実は、代引きは受け取り拒否になる可能性が他の決済方法より高く、また、送料分だけでも請求する方法がありません。


受け取り拒否など何らかの理由で商品が発送元へ返送となった場合、当然返送時にも送料が発生します。
更に生ものなど賞味期限が短ければ戻ってきた商品は廃棄せざるを得ません。廃棄にもコストがかかります。

クレジットカード決済であれば「返送となった場合も送料は返金しません」と最低限の損害を阻止できますが、代引きでは通常とは異なる方法で回収するしかありません。


勿論、代引きだろうと何だろうと購入者には支払いの義務がありますが、回収には手間もコストもかかり、ショップは泣き寝入りというのが実情です。
送料とはショップにとっては経費です。余分にかかれば一定の需要がある決済方法の代引きも廃止せざるを得ないというわけです。

不正注文のケースも

商品の購入と同時にメルカリなどのフリマサイトに、購入した商品が手元にないまま架空の出品を行います。
売れたらそのまま商品を受け取りますが、売れなかった場合受け取り拒否をするというパターンです。


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コンビニ決済

金額変更前の決済番号が有効である

決済代行会社のコンビニ決済で金額変更があった場合、金額変更前の振込番号が失効することはありません。変更したのに前の金額で振り込まれてしまうということもあり得ます。
(因みに楽天だと変更前の番号はすぐに失効します。こういうところは流石天下の楽天市場!と勝手に感謝しています。)

使用不可文字や文字数超過でエラーが起こる

例えば氏名が長すぎたり、記号が入っていたりすると決済エラーが起こる場合があります。電話番号の桁数がおかしい、等も原因としてあり得ます。

修正して再度審査依頼を掛けましょう。
(因みに楽天市場の場合、注文確認待ちステータスに留まり続ける為、個別に「注文確定」の処理をしてみましょう。どういう理由でエラーが出ているのか確かめることができます。)



後払い決済

請求書手数料は合算できない

2件の注文があった場合など、同梱して発送しているショップもあるかと思いますが、後払いの請求書をまとめることはできません。その為、請求書は2通発行され、手数料も2件分かかります。

もしも後払い決済の注文を同梱する場合は手数料分もまとめてしまわない様ご注意ください。

1件をキャンセルし、もう1件の金額を変更すれば、請求書は1通、手数料も1件分になりますが、後払いは与信調査に時間がかかるため手間がかかりますのでご注意ください。

キャンセルしても手数料は返金できない

後払いの手数料というのは、「請求書発行の手数料」という位置づけですので、請求書発行後のキャンセルだと手数料がなかったことにはなりません。
その為、ショップ責であるなら手数料を負担する必要があります。お客様都合などの場合も、ご説明を添えておきましょう。

不正注文

後払いも不正注文で利用されやすい決済方法の一つです。


出荷後に荷物の受取先を配送業者経由で変更し、請求書は元の住所へ送られるために支払いを逃れる。
荷受け代行や転送サービスを利用して支払いを逃れる。

など…。

後払いは保証制度のあるサービスもありますので、導入の際には何が保証の対象なのか十分確認しましょう。



番外編 定期カートの場合

カード期限切れ・利用額超過

定期購入をしている場合、クレジットカードは登録されたものから毎月オーソリ→請求がされますので、うっかりカードの期限が切れていた、限度額を越してしまっていた!ということも…。

後払い決済の場合も引っ越しにより与信に通らなくなるなどがあります。

ご連絡して情報を更新してもらうか、別の決済方法に変更をお願いしなければいけません。

 

初回価格狙いの不正転売

これは、定期サービスの初回だけが異常に安いというビジネスモデルを狙った手口です。
回数縛りがないものは当然初回のみで解約ということもあるのですが、

転売しやすい商材などは、回数縛りがあったとしても狙われることがあります。プリペイドカードやデビットカードに現金をチャージしていなければいつまでたってもオーソリは通らず、実質逃げおおせることが可能な場合があります。

こうしてみると不正注文は本当に色んな手口がありますね。

番外編2 利用限度額がある

例えばヤマト運輸の代金引換サービスの上限は30万円。

NP後払いの上限金額は55000円です。

このように、決済の金額によってはサービスによっては使えないことがあります。

逆に下限金額があり、クーポンやポイントを使い金額が0円になっているため注文ができない…なんてトラブルもあります。「注文ができない」とお問い合わせがあった場合、こういった可能性も疑ってみましょう。

 

まとめ

受注処理はこういった決済に関する知識も必要になってきます。

日々、決済方法の特性や注意事項を理解したうえでそれぞれのケースに照らし合わせ、異なる判断・対応をしているんですね。店舗によってはもっと多様な決済方法があり、別の情報と組み合わせて対応が異なってきたりします。

誰にでもできそうで誰にでもできなかったり、属人化してしまう理由の一旦だったりします。

参考になれば幸いです。

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