発送方法を考えないとバックオフィスが大変になりますという話

こんにちは。アプロ総研の出口です。
本日はECの送料や発送方法についてのお話です。

昨今、送料に関する消費者の目線は非常に、非常に非常にシビアです。
なのでショップは小さい荷物であれば、発送方法をメール便に変更して送る…なんて対応をしているわけです。

しかし…取扱商品が増えてきた時に、お客様のためを思って始めたはずの送料や発送方法の形態が複雑になりすぎて、バックオフィスの首を絞めるという事態が発生。
そんな状況になってしまった事例を耳にしたり、実際に相談を受けたりしています。

今回はECにおいて、顧客の利便性を上げたり損なったりする発送方法を、商品の販売計画段階から考えることはとても大切という事を語っていきます。

発送方法が違う商品があると困る事

そもそも受注処理をしていて、なんで発送方法が違う商品があると困るのでしょうか?

それでは事例として、今まで1つの配送業者で宅配便一択だったショップが、新たにメール便発送の新商品を販売することにした場合を考えてみましょう。

企画 「この度商品Aを新発売します! 発送方法はメール便です」
お客様「お、この商品いいな。送料無料だしストックあって困らないし、5個買っちゃおう」
受注 「注文きた! 倉庫に出荷指示!」
倉庫 「ん? 発送方法はメール便って言われて梱包してるけど、これ4個までしか入らないぞ…?」

こうなるとどうなるか。

倉庫「この内容だと容量超過でメール便発送できないので、メール便2通にするか、宅配便で送ってもいいですか?」

目的は『送料の負担を少なくお客様に商品を手に取ってもらう』ことなのに、メール便2通で送ってしまったら想定の倍の送料が実際にはかかってしまいますね。ポストに入りきらず配送が分かれてしまう可能性もあります。
実際こういったケースではメール便2通よりも宅配便で発送するほうが安価になる事が多いです。

では発送方法を宅配便に切り替えて、その分の送料を追加で頂く交渉をしてみましょう。

受注 「発送方法がメール便だと商品が入りきらないので、宅配便へ変更し、送料〇〇円を追加請求してもいいですか?」
お客様「え、送料たっか…。じゃあキャンセルします。」

これはまだいい方です。

お客様「そんなことどこにも書いてませんよね?発送方法はメール便で送料無料としか書いていないのにおかしくないですか?」

これもまだ、マシかもしれません。

実際はこういうケースもあります。


お客様「分かりました。仕方ないですね。それでお願いします」
受注 「ホッ、よかった…」

~数日後~

レビュー ★☆☆☆☆
送料が分かりにくい
商品ページには「送料無料」、としか書いていないのに、5個注文すると実際は、宅配便発送になるので、送料が〇〇円もかかると言われた。
今回は、時間もなかったので支払いましたが、事前に知らされていないうえに、送料が高すぎます。
しかも、送られてきたダンボールはスカスカで、梱包資材がギッシリ・・・もう少し、小さいサイズの箱で送ってくれたらいいのに。
不親切すぎます。お客の事を全く考えていないショップです。二度と買いません。

こういったことを避けるために「商品ページに注意書きを書きましょう」と商品ページの修正を行ったうえで

受注「商品Aの注文が入った! 注文個数は4個! メール便に入るので発送方法はメール便です!」
受注「商品Aの注文が入った! 注文個数は5個! 発送方法が宅配便に変更になるので、送料追加で決済審査をやり直します!」

といった業務が増えることになります。
しかもこれには発送方法の確認だけではなく「変更後の金額でオーソリが通らない…」「既に銀行振り込みで入金済みです…」といったイレギュラーも同時に引き起こします。
たった一つのメール便商品を生み出しただけで、こんなに大変な未来があるかもしれません。
(実際は発送方法を増やすための手続きの手間もかかっていますね)

実際は1商品くらいであれば対応はできますし、そこまで負担は大きくないでしょう。

こうなってしまうのは企画側と物流側のすり合わせが上手くできていないからです。
・・・ということは、改善しないと何度も同様の事が起こり、もっともっと複雑化する可能性をどこまでも秘めています。

しかし1か月後、「商品Aが好調なので、同じくメール便発送の商品B(色違い)を新発売します!」と言われたらどうでしょう。
しかも「発送方法が宅配便になるとキャンセル率が上がるので単品売りは廃止します。4個セットにして商品A 4個セット、商品B 4個セットにします!」とか決まったら。

更に一か月後「やはり単品売りの希望が多い為、単品売りを再開します!」「サイズ違いの商品Cを発売します!メール便に3個まで入ります!」なんてことになったら。

受注「商品A単品2個と商品B単品2個…この場合はメール便のままでよくて…」
受注「商品B 4個セットを3個注文。これは発送方法が宅配便で送料無料ラインを超えないからお客様に確認を取って…」
受注「商品A 4個セット、商品B 4個セットを2個ずつ…これなら宅配便で送料無料ラインを超えるから、宅配便発送に切り替えて…」
受注「商品A単品2個と、商品C単品1個…。…?これはメール便に入るのか?倉庫に確認して……」


……。

宅配便発送一択の時よりもはるかに複雑になってしまいました。

もっと良くないことも起こる

もっと追加でよくないことが起こるかもしれませんね。

ECは複数店舗展開しているショップも多いです。
カートAでは「商品Aと商品D(発送方法:宅配便)の組み合わせは宅配便として送料請求をカート画面でしてくれる」が、
カートBでは「商品Aが発送方法:メール便で送料無料だから、送料無料に引っ張られてカート画面で送料請求がされない」なんてことも。

更に発送方法によっては「この決済方法ではだめ」「指定日配達が受け付けられない」ということがあります。

メール便は基本的に指定日配達ができません。でもカート画面では入力できてしまうために指定日、時間帯指定を削除して、お客様に連絡して…という対応が必要になったりします。

代引きを導入しているショップであれば、メール便配送はできません。ポスト投函の為、お金を受け渡しするポイントがないですからね。
こうするとさらに「決済方法は代引きではないか」のチェックが必要になります。

他にも「冷蔵」「冷凍」など温度帯管理の必要な商品、外箱そのまま発送するために同梱ができない商品、離島地域への発送方法変更、仕入れ商品の為分納が必要、などなど複雑になってしまう要素は多岐にわたります。
こういったことが積もり積もって重なって、受注処理は複雑になっていくのです。(商品ページの注意書きもおびただしい量になります。)

商品を売ると決めたときはあんなに夢いっぱいだったのに…今はルールが複雑で対応が煩雑で大変になりすぎる…なんて事態になりかねません。

解決策として

こちらのコラムと同じような話になりますが、「100点を諦める覚悟」を持ちましょう。
イレギュラーは対応ルールを明確に定めましょう。
そうです。解決策はありません。なぜなら正解が無いからです。

しかし取捨選択をして可能な限り、バックオフィス業務を軽くすることもEC運営において大事な要素です。
受注業務が属人化しすぎると人の入れ替わりのたびに大打撃を食らいます。

商品の販売計画の段階からお届けまでを想定することで防げることはたくさんあります。できる限りの範囲で業務を圧縮しましょう。

もしそれで送料が高くなったりお客様の利便性を損なうことがあったとしても、処理が簡単であれば、それだけ迅速に対応できたり、サービス品質を保てたり、分かりやすい案内になったり、結果お客様の満足に繋がることも少なくないからです。

今回の事例は色々脚色しすぎだと思われた方もいると思います。
確かに少し脚色はあります。しかし絶対に起こらないとは言えません。というか、実際に近しいケースのご相談を複数受けています。

バックオフィスの事を考えないといくらでも複雑になってしまう可能性がありますので
発送までの想定をしっかり練ることも販売計画の一部ということで、一つよろしくお願いいたします。

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