EC担当者はAIでいらなくなる?商品登録・広告・CS、どこまで自動化できるのか
「商品説明文はChatGPTで作れる」
「広告運用もAIが自動で最適化してくれる」
「問い合わせ対応もAIチャットボットに任せられる」
ここまでAIが進化すると、
「もしかして、EC担当者っていらなくなるのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
実際、EC運営はAIとの相性が非常に良い分野です。
楽天市場ではすでにRMSにAI機能が搭載されており、商品説明文の作成、商品画像の加工、店舗データの分析、問い合わせ対応などを支援しています。
広告の世界でもAI活用は急速に進んでいます。Google広告では、AIがリアルタイムのシグナルをもとにターゲティングや広告クリエイティブを調整する仕組みが提供されています。
では、本当にEC運営をAIへ丸投げできるのでしょうか。
結論からいうと、
「作業」はかなりAIに任せられるようになってきた。しかし「EC運営」そのものを任せるのはまだ難しい。
というのが現状です。
この記事では、商品登録・ページ制作・広告運用・分析・受注処理・カスタマーサポートなど、EC担当者が行っている仕事を分解しながら、AIに任せられる仕事と、人がやるべき仕事を考えていきます。
そもそもEC担当者は何をしている?
「EC担当者」とひとことで言っても、その仕事はかなり広範囲です。
たとえば楽天市場やAmazon、自社ECなどを運営している企業では、次のような業務が発生します。
・商品登録
・商品説明文の作成
・商品画像やバナーの制作
・商品ページの更新
・SEO対策
・広告運用
・セール、キャンペーン対応
・売上、アクセス分析
・在庫管理
・受注処理
・問い合わせ対応
・レビュー対応
・メルマガ、LINE配信
・販促企画
こうして並べてみると、EC担当者は単に「ネットショップを更新する人」ではありません。
制作・マーケティング・広告・接客・物流・データ分析などを横断する仕事です。
だからこそ、「AIによってEC担当者がいらなくなるか」を考えるときも、EC担当者という職種を丸ごと見るのではなく、業務単位で考える必要があります。
【商品登録】AIでかなり効率化できる
AIとの相性が特に良いのが商品登録です。
楽天市場の商品登録では、画像・商品説明・価格などさまざまな商品情報を登録します。
従来は商品情報を確認しながら、人が一つひとつ説明文を考える必要がありました。
しかし現在は、
「この商品の特徴から説明文を作って」
「20代女性向けに書き換えて」
「このスペック表から商品紹介文を作って」
といった作業を生成AIに任せられます。
楽天市場でもRMS AIアシスタントに「商品説明文作成支援AI」が用意されており、商品名・商品画像・アピールポイントなどをもとに商品説明文を生成できます。
ただし「登録する情報を決める」のは人
ここで注意したいのが、
文章を作ることと、売れる商品情報を設計することは別
ということです。
AIは渡された情報から文章を作るのは得意です。
一方で、
「この商品の一番の強みは何か」
「競合商品と何が違うのか」
「購入者が不安に思っていることは何か」
「どの情報を商品ページに追加すべきか」
まで自動的に正しく判断できるとは限りません。
また、生成された商品説明には事実誤認や不適切な表現が含まれる可能性があるため、楽天市場も、人による正確性や法令面の確認が必要と案内しています。
つまり、
AI:文章を作る
人:何を書くべきかを決める
という役割分担が現実的です。
【商品ページ制作】「たたき台」はAI、「売れるページ」は人
商品ページ制作でもAIはかなり使えます。
たとえば、
・キャッチコピー案
・商品説明文
・FAQ
・構成案
・画像加工
・バナーのアイデア
・SEOキーワード候補
などはAIで作成できます。
楽天市場でも、商品説明文だけでなく商品画像の背景加工などを支援するAI機能が提供されています。
これまで1時間かけてゼロから考えていたものを、AIに最初の案を作らせて、人が修正する。
この使い方だけでも制作時間はかなり変わります。
ただし、商品ページで重要なのは「きれいな文章を作ること」ではありません。
重要なのは、
「なぜこの商品を買うのか」を設計することです。
レビューや問い合わせ、競合商品、検索キーワード、アクセス状況などを見ながら、
「購入者はここで迷っているのでは?」
「この情報が足りないのでは?」
「この商品の強みをもっと上に出した方がいいのでは?」
と考える部分には、まだ人の判断が大きく関わります。
【広告運用】かなり自動化される。でも「予算をどこに使うか」は残る
広告運用は、すでにAIによる自動化がかなり進んでいる領域です。
Google広告では、AIがリアルタイムのシグナルを処理し、ターゲティングや広告クリエイティブの配信を自動調整する「AI最大化設定」などが提供されています。
楽天市場などのモール広告でも、今後さらに自動化される領域は増えていくでしょう。
すると、
「広告担当者はもう必要ないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、広告にはもう一段上の判断があります。
たとえば、
「この商品に広告費をかけるべきか」
「利益率を考えるとROASはいくら必要なのか」
「新商品を育てるために一時的に広告費を増やすのか」
「広告より商品ページを改善した方がいいのではないか」
といった判断です。
AIは与えられた目標の中で最適化することには強くなっています。
一方、
「そもそも何を目標にするか」
は、事業側が決めなければなりません。
【売上分析】AIによってかなり楽になる
EC担当者が意外と時間を取られるのがデータ分析です。
売上、アクセス人数、転換率、客単価、広告費、ROAS、商品別売上……。
数字は見られても、
「で、何をすればいいの?」
となるケースは珍しくありません。
ここもAIとの相性が良い領域です。
楽天市場では「店舗カルテ分析支援AI」が提供されており、アクセス人数・転換率・客単価などのデータ分析を支援しています。
今後は、
「先月売上が落ちた原因を調べて」
「CVRが悪化している商品を抽出して」
「広告費が増えているのに売上が伸びていない商品を探して」
といった分析も、さらにAIへ任せやすくなっていくでしょう。
ただしここでも、
分析結果をどう経営判断につなげるか
は人の仕事として残ります。
【カスタマーサポート】最もAI化が進みそうで、完全自動化が難しい
ECの問い合わせ対応もAI活用が進んでいます。
AIチャットボットなら、
・営業時間
・配送日
・返品方法
・支払い方法
・商品の基本的な使い方
といった「よくある質問」には自動で回答できます。
また、問い合わせ内容の分類、要約、返信文の作成などにもAIを利用できます。
実際のEC運営でも、
AIが回答案を作る → 人が確認して送信する
という運用はかなり現実的です。
CSで怖いのは「例外対応」
一方、ECのCSにはAIだけでは処理しづらい問い合わせもあります。
たとえば、
「届いた商品が壊れていました」
「プレゼントなのに指定日に届きませんでした」
「注文内容を変更したい」
「この場合は返品できますか?」
などです。
注文状況、商品状態、配送会社、社内ルール、過去のやり取りなどを確認しながら判断しなければならないことがあります。
さらに、クレーム対応では、正しい情報を返すだけでなく、顧客の感情を踏まえた対応も重要です。
そのためCSは、
FAQ・一次回答 → AI
判断が必要な問い合わせ → 人
という分業が進む可能性が高いでしょう。
【受注処理】AIより「自動化」が重要なこともある
ここは、AIの話になると意外と見落とされやすいポイントです。
受注処理には、
・注文確認
・配送方法の判定
・在庫確認
・配送先確認
・注文変更
・キャンセル
・ギフト対応
・熨斗対応
・倉庫への出荷指示
などがあります。
これらは、何でも生成AIにやらせればいいわけではありません。
「AならBにする」という明確なルールが作れる業務なら、OMSやWMS、各種自動化ツールを使った方が安全かつ効率的なケースがあります。
実際のEC現場では、
AIを導入する前に、そもそもの業務フローを整理した方がいい
ということも少なくありません。
AIに複雑な業務を覚えさせるより、
「この作業、そもそもなくせない?」
「注文時点で必要な情報を取得できない?」
「システム側で自動判定できない?」
と考えた方が、抜本的な改善につながることがあります。
AIに任せやすいEC業務・人が残るEC業務
ここまでを整理すると、おおよそ次のようになります。
| EC業務 | AI・自動化との相性 | 人が担う部分 |
|---|---|---|
| 商品説明文作成 | ◎ | 内容確認・訴求設計 |
| 商品画像加工 | ◎ | ブランド判断・最終確認 |
| 商品登録 | ○ | 商品情報・属性の設計 |
| SEO | ○ | 戦略・商品選定 |
| 広告運用 | ◎ | 予算・利益・目的の判断 |
| 売上分析 | ◎ | 施策の意思決定 |
| メルマガ | ◎ | 企画・ブランド判断 |
| FAQ対応 | ◎ | 例外処理 |
| CS | ○ | クレーム・個別判断 |
| 受注処理 | ○ | 例外処理・業務設計 |
| 販促企画 | △~○ | 戦略・優先順位 |
| EC全体の運営判断 | △ | 人が中心 |
つまり、EC担当者の仕事がなくなるというより、「EC担当者がやるべき仕事」が変わると考えた方が近いでしょう。
AI時代に減っていくのは「EC担当者」ではなく「作業担当者」かもしれない
これまでは、
「商品を登録する」
「説明文を書く」
「数字をExcelにまとめる」
「問い合わせメールを書く」
といった作業そのものに、多くの時間が必要でした。
しかし、この部分はAIや自動化によって急速に短縮されています。
その結果、EC担当者には別の能力が求められるようになります。
作る人から、判断する人へ。
たとえば、
「何をAIに任せるか」
「どの商品を伸ばすか」
「広告費をどこに使うか」
「どの業務を自動化するか」
「顧客の声から何を改善するか」
「売上を伸ばすために次に何をするか」
を考える仕事です。
AIによってEC担当者が不要になるというより、AIを使って作業時間を減らし、売上や利益につながる判断へ時間を使えるEC担当者の価値が高くなる可能性があります。
「AIを入れれば効率化できる」とは限らない
ここはかなり重要です。
AI導入を検討する企業で、
「とりあえずChatGPTを使おう」
「問い合わせを全部AIにしよう」
「広告もAIに任せよう」
となってしまうことがあります。
しかし、業務そのものが整理されていなければ、AIを入れても効率化できません。
たとえば、
・商品マスターが整理されていない
・担当者ごとに作業方法が違う
・受注処理のルールが決まっていない
・FAQが整理されていない
・広告の目標値が決まっていない
・誰が最終確認するのか決まっていない
という状態です。
AI活用の前に必要なのは、業務の棚卸しとルール化です。
楽天市場の公式情報でも、AI導入はすべての業務へ一気に広げるのではなく、課題を特定し、小さな範囲から試して効果を検証する方法が案内されています。
EC業務をAI化するなら、まずこの順番
いきなり「EC運営をAI化しよう」と考える必要はありません。
まずは現在の業務を書き出します。
そのうえで、
①なくせる仕事
②システムで自動化できる仕事
③AIに任せられる仕事
④人が判断すべき仕事
の4つに分けてみるのがおすすめです。
特に、
「毎日繰り返している」
「判断基準が決まっている」
「文章やデータを大量に処理している」
業務は、AI・自動化を検討しやすい領域です。
逆に、売上戦略、利益判断、ブランド方針、例外対応などは、人が主導した方がよいケースが多いでしょう。
よくある質問
EC担当者の仕事はAIに奪われますか?
商品説明文作成、データ分析、広告最適化、問い合わせの一次対応など、AIに任せられる業務は増えています。
一方、戦略立案、利益を考慮した判断、商品企画、例外対応など、人による判断が必要な仕事も多く残ります。
「EC担当者が不要になる」というより、担当者の仕事が作業中心から判断・改善中心へ変化していくと考えるのがよいでしょう。
商品登録はすべてAIでできますか?
商品説明文などの生成はかなり自動化できますが、価格、スペック、商品属性などの元データが正しくなければAIも正しい商品ページを作れません。
特に大量の商品を扱うECでは、AI導入と同時に商品マスターを整備することが重要です。
ECの広告運用はAIに任せても大丈夫ですか?
入札やターゲティング、広告文など、AIによる自動最適化が進んでいる領域はあります。Google広告でもAIによるターゲティング・クリエイティブ最適化が提供されています。
ただし、予算配分や利益率、商品戦略などを含めた事業判断まで自動で正しく決めてくれるわけではありません。
カスタマーサポートはAIだけで運用できますか?
FAQなど定型的な問い合わせはAIとの相性が良い一方、クレーム、返品・交換、配送トラブルなど個別判断が必要な問い合わせもあります。
AIによる一次対応・回答案作成と、人による最終判断を組み合わせる方法が現実的です。
まとめ|EC担当者がいらなくなるのではなく「仕事の中身」が変わる
AIによってEC運営は確実に変わり始めています。
商品説明文、画像加工、広告最適化、データ分析、問い合わせ対応など、これまで人が時間をかけていた作業の一部は、すでにAIで効率化できます。
一方で、
何を売るのか。
誰に売るのか。
どの商品を伸ばすのか。
どこに予算を使うのか。
顧客の声をどう店舗改善につなげるのか。
こうした判断までAIに丸投げするのは難しいのが現状です。
これからのEC運営で重要なのは、
「AIか、人か」ではなく、「AIに何を任せ、人は何に集中するか」
を設計することではないでしょうか。
AIで作業時間を減らし、その分を商品ページの改善や販促企画、顧客理解などに使う。
それが、AI時代のEC担当者の働き方になっていきそうです。
EC運営の「AI化・自動化」、どこから手をつければいいかわからない方へ
株式会社アプロ総研では、楽天市場や自社ECなどの運営支援を行っています。
商品登録やページ更新、広告運用、受注処理、カスタマーサポートまでEC運営には多くの業務がありますが、すべてを人力で続ける必要はありません。
一方で、何でもAI化すればいいわけでもありません。
実際の運営フローを確認しながら、
・なくせる業務
・自動化できる業務
・AIを活用できる業務
・人が対応した方がよい業務
を整理することで、EC担当者が本来取り組むべき「売上を伸ばす仕事」に時間を使える体制を作りやすくなります。
「日々の作業に追われて改善まで手が回らない」
「AIを使いたいけれど、どこから始めればいいかわからない」
「EC担当者の負担を減らしたい」
という場合は、現在のEC運営業務を一度棚卸ししてみるところから始めてみてください。




