引き当てとは

こんにちは。アプロ総研の受注担当スタッフです。

今回は簡単なようで定義が難しくややこしく複雑な、在庫の「引き当て」についてです。

ECにおいて引き当てとは、「注文が入った分の在庫を確保しておく」ことです。データ上の取置きみたいなものですね。

カートシステムで注文が入ると、その時点で販売されている在庫数は減ります。1店舗ならカートが管理してくれるので簡単な話なのですが、2店舗3店舗と増えていくとこれがものすごく…ものすごく難しくなります。

なので「在庫管理システム」「受注管理システム」を使って引き当てをかけ、減った分だけ他の店舗の在庫も連携して減らす…という運用をしているショップが多いと思います。在庫の管理だけであれば在庫管理システムの導入でもいいですが、後々は受注管理システムで受注作業を行う事を見越して、在庫連携の為だけに受注管理システムを導入するショップもありますよ!

有効(論理)在庫と実在庫という概念

 

 もう少し詳しく「引き当て」について掘り下げてみたいと思います。

 まずは引当に関する言葉の説明からしていきますね。

  1. 実在庫数・・・元々お店にある商品数を実在庫数といいます。実際の商品点数です。
  2. 引当在庫数・・・お客様から受注があり、あらかじめ取り置きした数です。注文受注数です。
  3. 有効(論理)在庫数・・・実際に販売可能な在庫数です。その後の受けられる受注数という事です。

『実在庫数ー引当数=有効(論理)在庫数』という式になります。

 注文から発送までには多少なりとも時間がかかりますよね。10個の在庫がある商品に2個分注文が入るとします。すると、まだ発送を行っていないので商品は手元に10個ありますが、内2個は既に売れているので、現在販売できるのは8個となります。

 このように、実在庫から制約されている在庫を確保した後の、実際に販売できる数が「有効(論理)在庫」です。この有効(論理)在庫を導き出すことが「在庫引き当てを行う」と言ってもいいでしょう。

 直接商品を動かすわけではないですが、引き当てで調整をかけて内々で準備しておくイメージです。

在庫引き当てが重要な理由

 さて、ここでなぜ在庫管理にとって引き当てが重要なのか。それは在庫引き当てのロジックです。

 在庫の引当数は商品の受注があったタイミングで加算され、商品を発送したときにその注文分がマイナスされます。
一方、有効(論理)在庫は仕入れや受注のときに数値が変わる仕組みです。このように在庫引き当てを行うことで、新しく受注が来たときに出荷できる在庫数を把握できます。有効(論理)在庫数を把握しておくことで、商品がなくなる前に十分な在庫を準備し補う事が出来ます。

 また、注文が来た時点で在庫引当を行えば、納品遅れなどのトラブルを防げます。 在庫数以上の商品を受注してしまうと、在庫切れや商品の発送遅延につながり、信頼を落としてしまうおそれがあります。

 在庫引き当ては、「注文があるのに売り切れてしまった」という販売機会の損失と、それに伴うトラブルを防ぐために欠かせない作業であると言えるでしょう。せっかくお客様から注文が入っても、在庫がなければ商品を発送できません。在庫引当では注文が入って出荷予定の在庫を区別するために必要な在庫管理方法です。これを踏まえた上で下記の例を参考にしてみましょう。

1.販売待ちの状態です。実在庫数が100個ならば有効在庫数は100個 
  販売待ちなので受注は0件ですよね。そのため引き当てが発生していないこの状態であれば有効在庫数はイコールという事になります。
  ・実在庫   100
  ・引当数     0
  ・有効在庫数 100

2.30個の受注が入ってきました。実在庫数100個/有効在庫数は70個 
  100個のうち受注された=引き当てを30個します。
  ・実在庫   100
  ・引当数     30
  ・有効在庫数   70

3.販売可能数の有効在庫が70個では少ないため、30個発注しました。
       実在庫数130個/有効在庫数は100個 
  ・実在庫   100   +  発注数 30 = 130
  ・引当数     30
  ・有効在庫数 100  

4.その後20個の受注があれば実在庫数130個/有効在庫数は80個
  受注があった=引き当てします。
  ・実在庫   130
  ・引当数     30   +   20 = 50
  ・有効在庫数   80 

 いかがでしょうか。小売りのECサイトではこの単位が1や2になるので、もっと細かくなります。これを倉庫で人力で管理するとなると、規模が小さければ問題ないかもしれませんが、だんだんと売り上げが大きくなり取り扱うアイテム数が増えていくと、できなくはないかもしれませんが、どこかでミスが起こりお客様とのトラブルに発展しそう……なくらいの大変さは想像できますよね。

引当を管理するメリットとは?


1.遅延リスクの軽減
 有効在庫数がわかることで適切なタイミングで仕入することができ受注後に納品できなくなるリスクを低減し、納期までに商品を確実に発送できることで顧客満足度の低下を防ぐことが可能です。
 また、在庫管理をする際、在庫が多すぎても在庫管理コストがかさんでしまいますし、在庫が少ないと必要な時に在庫がないなんてことになってしまいます。在庫は適切なタイミングで適切な量を準備することが重要になります。在庫引き当てをしっかりしておくことで、在庫量を調整できるようになるので適切なタイミングで仕入をすることが可能です。

2.在庫情報の共有化
 在庫情報を常に更新しておくことで、担当者全員がリアルタイムで在庫状況を確認することができ、これによって欠品や余剰在庫のリスクを防ぐことが可能となります。
 とくに多店舗で多数の商品を取り扱っている場合には、商品一つ一つ在庫を管理することが難しいため、全員が把握できる仕組みづくり整えておくことがとても大切です。在庫管理システムを導入すれば、いつでも在庫情報を閲覧・確認できる体制を整えられますし、このメリットを最大限に生かすことが出来るでしょう。

3.在庫管理を効率化
 在庫引き当てを計算して有効在庫数をチェックすることで、在庫管理が効率化できます。実在庫数が豊富にあったとしても、有効在庫数が足りない状態だと十分な在庫数とはいえません。有効在庫数知ることで、倉庫担当者が商品の過不足をスピーディに判断できるようになり、在庫管理の効率化につながり早めに在庫を確保できるため急な受注にも対応可能になります。欠品のリスクの軽減にもつながります。 


 在庫があると思って販売を続けていたが、売り越しが起きて在庫が足りなくなり、お客様にご迷惑をおかけし、クレームに発展したり…。更にその対応に気を取られ在庫数を訂正していない為に更なる売り越しが発生し、対応を終えたころには正確な在庫数が分からなくなっていたり…。自社製造のメーカー様で、追加製造などによりある程度商品数をコントロールできてしまうが故にここが放置されているケースもありました。

 販売可能な論理在庫を適切に把握し、管理することはお客様のスムーズな買い物、ひいては満足度の向上につながるものです。勿論、システムを入れての自動引き当てを行うとショップも作業を効率化できて楽になりますね。

引き当ての管理をする方法

引き当てを管理する方法として、以下3つの方法があります。

1.手書き管理
 商品数が少ない場合や受注件数があまり多くない場合であれば、手書きでも管理は可能です。冒頭で紹介したように、「受注」「仕入」「入庫」「出庫」「引当」を手書きで管理します。手書きで管理すれば、特別なシステムは必要ないため手軽に引当数の管理をすることが出来ます。
 ただし、小規模な取引であれば手書きで済むかもしれませんが大規模な取引だと件数が多くなり、手書きでは追いきれなくなってしまいますね。

2.Excel等の表計算ソフトで管理する
 Excelやスプレッドシートなどの表計算ソフトを使えば手書きを使うよりも効率的に在庫管理ができます。 マクロやVBA等のツールを使えばシステム的に在庫を把握しやすくなるでしょう。
 しかし、表計算ソフトを使っても機能に限度があります。また、現場の人間がすべて正しく表計算ソフトを扱えるとは限らず、ヒューマンエラーも発生してしまいやすいため規模が大きくなればこちらもなかなか難しいかもしれません。

3.在庫管理システムを導入する
 在庫管理システムとは、受注から出荷・その他のあらゆる業務における在庫情報を保有、  物流に関わるデータを一元管理できるシステムです。在庫管理システムでは有効在庫数や引当数が自動で算出できるため、多数の商品を抱えている場合でも、すべての商品の在庫数を正確に管理することができます。                          在庫管理システムには受注内容を自動入力できる機能をもつものもあり、受注内容の入力ミスを大幅に削減することが可能です。また、在庫管理の担当者が毎回入力する手間を省くことができるため、業務効率化にもつながります。

在庫連携と引き当ては違う

引き当ては、実在庫数から注文が入っている分の在庫を差し引きし、販売可能な論理在庫を導き出すこと。
在庫連携は「在庫を複数店舗で共有し、常に販売可能数に更新すること(している状態)」です。
この2つは繋がってはいるのですが、イコールではありません。別物です。
が、混同してしまう事が多いように思います。言葉の扱いが難しいですね…。

在庫連携=在庫が繋がっている、という認識で、引き当ては在庫連携で在庫が繋がっているから行われる、というように理解されてしまったり。
これはカート側で「在庫がゼロ(=引き当てがかかる)になると販売が中止」になるからというのが関係しているようです。
しかし、1店舗しかなく在庫連携の必要が無くても、在庫連携がうまくいってなくても、引き当ては行われるものになります。

 

売り越しは起こるときは起こる。

 引き当ては在庫管理システム受注管理システムを用いて行う方がオススメです。複数店舗あるなら在庫連携も必須です。

 しかし、システムによる自動引き当てや在庫連携により、適切な在庫管理ができるようになったとしても、特に売り越しは100%防げるものではありません。限りなくリスクを低くすることはできますが、ECサイトでものを売る以上は「絶対起こらない!」とは言えません。

 何故なら在庫連携には「タイムラグ」があるからです。10分間隔で在庫連携がされている場合、商品が1つ売れた瞬間から最大10分間は残りの店舗の在庫は論理在庫より1つ多いということになるからです。これが残り1個で、在庫連携を待っている間に別店舗で購入されてしまうとめでたく売り越しの完成です!
(余談ですが、商品Aを8個ほしいお客様がいて、実際の在庫は5個。B店舗で5個購入後、C店舗で3個購入…といった同一のお客様による売り越し発生もあります。この場合事情をご説明すると2件ともキャンセルになる事が多いです…。)

 受注管理システムではこれを防ぐために「B店舗はよく売れるから在庫の70%を振り分けておこう」「残りの在庫が20個以下になったらC店舗のみで販売しよう」といった店舗間で在庫の振り分けを行う機能などもあります。

 その他一部の店舗で在庫連携が切れていた、計上した在庫が狂っていた、在庫としてあった商品が破損していたなど色んな理由で、起こるときは起こる!ものになりますので、たとえ引き当てが正常だったとしても「売り越しは起こるときは起こる」という前提を持っておきましょう。(そして対応を決めてメールのひな型等を用意しておきましょう。)

 

まとめ

 表示の納期通りに商品をお届けすることはECサイトにとって大変重要なことです。それを実現するためには在庫の引き当てが必須です。

 在庫引当を行い有効(論理)在庫数を把握することで、欠品や余剰在庫のリスクを低減できます。有効在庫数が正しい数値になるよう、実在庫と論理在庫のズレが生じないようにデータを管理し、商品の保管場所を徹底、ルール化しましょう。
 しかし、この作業をミスなく人力でやるのは、出荷オペレーション上あまり現実的ではないうえに、ミスが起こった場合は他の箇所に波及してトラブルが大きくなってしまう事もあります。
 ということで、やっぱり受注管理システムの導入が必要になります。在庫管理の為だけに「受注管理システム」を導入するショップもあるくらいです。
 弊社ではネクストエンジンの設定代行なども行っていますので、「まずはネクストエンジンを導入して在庫連携を使いたい!」「ゆくゆくは受注管理も行いたい!」などお考えでしたら是非一度弊社までお問い合わせください。

前へ

EC運営代行って結局なにをしてくれるの?

次へ

ネット販売を個人でやってみたいんじゃい!